真っ当な大人

両親を亡くした子供が親戚の中で盥回しになりそうなところを、縁の遠い独身の大人が引き取るー という設定。
記憶に新しいのは大ヒットしたドラマ『マルモのおきて』、マンガだと『うさぎドロップス』、『海街ダイアリー』など。
いずれも、その子を引き取らなければならない立場ってわけではなかった人たちが、その子のことを考えたら自分が引き取らないではいられなかった、というところからのスタートです。

『大人って子供を守るもんだろう』という、至極真っ当な判断が最初になされている、この時点で視聴者あるいは読者は、物語のその後は温かいものになるだろうと予感し、安心できる気がします。
『マルモ』と『うさぎ』は小学生の子どもを引き取るお話なので、思春期まっただ中の女の子を引き取る『海街』とは雰囲気が大分異なります(『うさぎ』では小学生だったリンちゃんが成長して大人になるまで描き切ってますが)が、いずれにせよ真っ当な大人が中心にいてくれるという世界観は、私たちを安心させますね。

『違国日記』は『海街』同様、中学生の女の子を引き取る話。繊細な雰囲気は『海街』に重なる部分も多いです。

違国日記(1) (FEEL COMICS swing)

ヤマシタトモコ/祥伝社

両親を突然の事故で亡くし、まだ「悲しい」という感情すら抱けないで「ぽつーん」「ぽかーん」としている15歳の少女「朝」を引き取ったのは、朝の叔母「槙生」
仲の悪かった姉「実里」の子である朝とはほとんど会ったこともなかったし思い入れもないのだけれど、葬儀の席で親せき一同が、朝が実里の実子ではないらしいなどの噂話や責任の押し付け合いを、朝本人の目の前でやるのを見かねて彼女に声をかける

「あなたは 
  15歳の子供は

 こんな醜悪な場にふさわしくない
 少なくともわたしはそれを知っている

 もっと美しいものを受けるに値する」

「わたしは大体不機嫌だし あなたを愛せるかわからない」

「でも」

「わたしは決してあなたを踏みにじらない」

「それでよければ明日も明後日もずっとうちに帰ってきなさい」

真っ当な(でも親戚の中でははみ出し者の)大人の真っ当なセリフにしびれます。
『(15歳の子供は)もっと美しいものを受けるに値する』という感覚、好きだなあ。。。


でも、こんなカッコイイ言葉で朝を引き取った男前な(女性)槙生ですが、彼女自身も沢山の傷を抱えているのか、人間関係に対して恐れを抱いている様子。後日「15歳みたいなやわらかい年頃 きっとわたしのうかつな一言で人生が変えられてしまう」「怖い」と友人に告白しています。

繊細で不器用な大人と、傷ついているのにまだそれを受け入れられてもいない少女の不器用な二人暮らし。
まだ1巻しか出ていないので、今後どういう展開になって行くのかまったく未知数ですが、面白くなっていくに違いないという予感がします。
次巻が楽しみ。





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# by vitablommor | 2018-01-31 09:43 | 本・CD・DVD | Comments(0)

異文化の面白さ

みなさんにはイスラム教徒の友人がいますか?私はいません。
イスラム教徒だけじゃなくて、ヒンズー教徒もいなければキリスト教徒の友人も今はいないなあ~。学生の時は「一応、クリスチャン」って言ってた人が二人いたけど(実家がクリスチャンなので生まれてすぐ洗礼を受けたけど、本人は特に教会に通ったりはしていないとのことで「一応」らしい)。あ、お寺の息子(継いだ)とお寺に嫁いだ人が友達にいるので、仏教徒の友はいると言えよう。
そういえば会社の先輩のご実家が神社で、その方のお父さまが亡くなられた時、お葬式に行くことになった上司が「神道の葬儀の作法ってどんなんだ?!」って慌てていたこともあったっけ・・・。

私はこんな感じですが、同じように日本人が日本で暮らしていると、日常あまり宗教や信仰について意識することはないと言う人がほとんどなのではないでしょうか?
そんな、日本の普通の女の子であるサトコが、アメリカ留学中にサウジアラビア出身のイスラム教徒の女の子ナダとルームシェアすることになり・・・というこのマンガ、すごくよかったです。

サトコとナダ 1 (星海社COMICS)

ユペチカ/講談社


イスラム教徒の女性って、人前で肌を見せることを禁じられていたり、サッカー観戦できないとか、免許が取れないとか色々断片的に聞いたことがあって、これらのことは「女性を守るため」との考え方からきているんだと聞くけれど、「守る」という言葉を使いながらその実すごく虐げられているってイメージだったのですが、これを読んだら少し考えが変わりました。

たとえば漫画にあるエピソードで、サトコとナダの友人であるアメリカ人の女の子ミラクルは、全身を覆い隠す服装のムスリムの女性たちを見てサトコに
「あの人たち、みんなああして隠さなければならないのかしら かわいそうね」
と言うのだけど、ムスリム女性であるナダは逆にアメリカ人女性のビキニ姿のポスターを見て
「こんな格好でよく写れるわね かわいそうに」
って言うんですよね。
私は最初、ナダの言うほうの「かわいそう」にはピンとこなかったんですけど、ナダは別のシーンでサトコに
「ニカブ(目の所以外を全部覆うイスラム女性の民族衣装)を着るってどんな感じ?」と聞かれて
「もちろんこれを着てるとムスリムとして対応されてしまうわね」
「でも…女として対応を変えられることはないの」
「綺麗な人が得をする世界でしょう ここは」
と答えていて。。。
つまり先ほどの水着女性は、ナダから見ると、『男性にとってより魅力的なセックスシンボルであることを求められ、優劣をつけられる世界で生きている女性』⇒「かわいそう」なのかなと。

立場が違えば物事の見方が変わる、というけれど、文化に根差したものの見方の違いは時に想像を超えるし、当たり前のように感じていたものをあらためて考えてみる機会になるのだなあと感じました。
昨今は異文化を排斥する動きが世界中で見られますが、なんとかサトコとナダみたいに、文化は全然違うけど友達にはなれるよ、って感じになって行ってほしいなあと思います。

ちょっと硬い話になってしまいましたが、マンガ自体はとてもほのぼのした雰囲気で、読みやすくて面白かったですよ。
おすすめです。




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# by vitablommor | 2018-01-30 11:40 | 本・CD・DVD | Comments(0)

怖いと思うもの

何を怖いと感じるか、というのは人によって大分差があるような気がします。

前記事で私は鳥が好きだって書きましたが、鳥が嫌い、怖いって言う人も何人か知っています。
彼ら彼女らにどこが怖いのかと問うと、足が気持ち悪いと言う人と、くちばしが怖いと言う人と、目が怖いと言う人がいて、同じ「怖い」でもその内容には差があるようです。
一方で私は鯉が怖い。特に公園などで人が近寄ると餌をもらえると思っている集団。大軍で水面に顔を出して超貪欲に口をぱくぱくさせているあの形相に恐怖を感じてしまうのですが、人々はそんな鯉たちに楽しそうに餌を投げています。

穂村弘さんは、いろんなことが怖い人、日常の小さい歪みの中に怖さを見つけてしまう人、のようです。

鳥肌が

穂村 弘/PHP研究所

駅のホームで先頭に並ぶのが怖い、などの想像しやすい恐怖や、旅先のホテルやドライブ中などの恐怖体験、さらには友達の再婚相手の顔が前の奥さんにそっくりだったとき、友達の家に遊びに行ったときの家の匂いの違い、などに感じるもやもやした思いなど、日常の中で、ふと怖くなる瞬間について語った短編エッセイ集。読みやすくて面白かったです。

個人的には『自分フラグ』という文章がツボ。自分がいつか何かとんでもないことをしでかすのではないか、という恐怖、たとえば演劇を見ていて、自分がふいに何かしてしまって(奇声をあげるとか、舞台に駆け上がるとか)舞台をぶち壊すのではないかと思ったり、「赤ちゃん、抱っこしてみます?」と言われたときに、もしかしたら抱っこしてそのまま窓からぽいっと捨てちゃうかもしれない、と思ったりして怖くなるという話。なんでだろう?わかる!この感覚わかる!

この本の表紙カバーにはタイトルに合わせて鳥肌状のぽつぽつとした凸が作ってあって、ちょっと怖いので触らないように注意して持っていましたが、それでも時々手が触れてしまってそのたびに少しぞわっとしました。
祖父江慎さんの装丁。
やはり、というか、さすが、というか。



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# by vitablommor | 2018-01-29 11:00 | 本・CD・DVD | Comments(0)

鳥好き

猫派か犬派かという問いには、私は鳥派と答えようと思う。

子どもの頃、実家で小鳥を飼っていたので鳥は好きです。
つがいで飼っていた十姉妹は人間(私)など眼中にないようでしたが、単独飼いのインコや文鳥はよく慣れて遊んでくれました。
あのふかふかの羽毛、つややかな嘴、下から上に閉じるまぶたも、鳥嫌いの人が「ぎゃーっ!」ていう足指や爪も愛らしい。猫とちがってトイレを覚えるってことがないのが困りものですが、ご縁があればまた飼ってみたいと思っています。
そういえばユニバーサルホームのCMに出てくる小さいフクロウ(コキンメフクロウ)もかわいくて飼ってみたいと思ったのですが、調べるとやっぱり小さくても猛禽類、餌には冷凍ネズミが必要なようで、うちの冷凍庫にタッパーに入ったネズミがずらーっと・・・という光景を想像してやめました。


『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』というタイトルですが、この先生、めっちゃ鳥好きです。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

川上 和人/新潮社

呼吸するたびに口と鼻が大量のコバエだらけになってしまうような環境でフィールドワークしたり、おやつタイムにチョコボールのキャラクター『キョロちゃん』が肉食なのか果実食なのかを推理したり、よっぽど好きじゃなきゃ絶対やらない。
そんな、鳥大好きな川上先生が、鳥について、鳥類学研究のための過酷なフィールドワークについて、絶滅危惧種を救うためにやってきたさまざまな活動について、また、クマに襲われたとき死んだふりをすることの効果について?すごい勢いで語りつくした本。

理系の学者さんの本なのですが、落語家か?って思うくらいに文章が面白いです。
正直私はウグイスとハシナガウグイスのどちらが亜種でどちらが基亜種でもどっちでもいいのですが、そんな風にそれほど興味のない話題でも、語り口の巧みさで読ませてしまう力技。お見事。

全編にわたって「鳥が好きー!」という熱が伝わってくるのですが、やはり研究者でいらっしゃるので、フィールドワークでは鳥を捕まえて殺して剥製を作ったりするわけで、うう、理系の学問と言うのはいろいろ厳しいなあと思ったりもしました。
研究の対象としての「鳥好き」と愛玩の対象としての「鳥好き」は相容れない部分が多いんですね。



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# by vitablommor | 2018-01-25 12:48 | 本・CD・DVD | Comments(0)

レゲエとマトリックスはすごいらしい

各種「引き寄せ」本がヒットしてる昨今ですね。
年末にスケジュール帳を探していたら「願いを叶える」ノートなんてものも発見しました。
「思考は現実化する」って聞くと、それが本当ならすごくいいじゃん!と思うかもしれませんが、案外これネガティブな思考の方が現実化しやすいらしいですから(「壊れたら嫌だなあ」って思っているものほど壊れる、とかね)、実は結構恐ろしいことのような気もしますよ。

この本も言ってみればそういう「思考の現実化」について書かれた本です

悪魔とのおしゃべり

さとう みつろう/サンマーク出版

「お金持ちになりたい!」と願えば「お金持ちになりたい!」(という状態⇒つまりお金が不足している状態)が叶う…っていうかもう目の前で叶っている。
「彼女が欲しい!」と願えば「彼女が欲しい!」(という状態⇒つまり今彼女がいない)が目の前で叶っている。
・・・という。
なんだそれ?って感じですが、私が知る限り引き寄せ本って大抵こんな感じのことが書いてあると思います。
なので「もう叶っている」と思い込むことが大事(つまり「私はお金持ち!」と信じ込むとかね)、ってよく書かれていますが、そうそう簡単に自分の脳を騙せるかって話ですよね。「私はお金持ち!」と何百回唱えようと、心の底から信じてないと引き寄せられないそうなので。

そんな話はもう何十回と聞いてるんだよ、その先を教えてよ!って感じになりながら読み進めました。
ちなみにこの本、「悪魔とのおしゃべり」というタイトル通り、主人公と悪魔との(時には友達との)対話形式で進んで行きます。なので一見とっつきやすく読みやすいのですが、実は結構難しい話(哲学対話っぽいんだけど、実は量子力学とか素粒子物理学の分野らしい)も展開されるので、主人公たちか会話しながら「そうか!」「なるほど!」「わかった!」とテンポよく理解していくのと同じペースで理解するのは難しかったです。

「世界」と「私」はもともとひとつのものが二つに分かれた状態で、だから、「私」にあるものは「世界」の側にはない(見えない)んですって。だから私たちが外の世界を感じるセンサーである五感で感じられないものが、実は「私」と伴にあるものなんですって。
わかります?ちょっと難しいですよね?

で、こういった世界のしくみについて「引き寄せ」本なんかが出るずっと前に理解して表現していたのが、レゲエ(ボブ・マーリー)と映画「マトリックス」らしいですよ。正直、読んでいて一番「へー」と思って面白かったのはこのレゲエとマトリックスの繋がりの部分だったかも。


という感じで、一読して体感的にスッと腑に落ちる感じにはなれませんでした。
でも、結局言ってることが『スピリチュアルかあさん』とそっくりだな~と思いました。
物理学だろうがスピリチュアルだろうがレゲエだろうが結論は同じってこと?!
ってことになると、なんだかそこには何かしら本当のことがあるような気がします。




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# by vitablommor | 2018-01-24 08:55 | 本・CD・DVD | Comments(0)

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