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2019年 05月 31日 ( 1 )

小泉今日子の存在感

『わたしの16歳』という歌でアイドルデビューした小泉今日子さんを初めてテレビで見た時に、なんでかはわかりませんが、この人は、こんな髪型(いわゆる聖子ちゃんカット)もこんなワンピース姿も、本当は不本意なんじゃないかなあ?と思ったことを憶えています。
何でそんな風に思ったんだろうか?
ともあれキョンキョンは、その後既存のアイドルの殻を自ら打ち破って、今も魅力的な女優さんとして活躍中です。


主人公ナスミ役を小泉今日子さんで当て書きされた本。で、間違いないです。

さざなみのよる

木皿泉/河出書房新社


NHKで以前放送された『富士ファミリー』というドラマの続編、というか、時系列から言うとその前のお話。
ドラマの中ではもう鬼籍に入っていた次女の『ナスミ』が入院して息を引き取るまでが導入部となり、その後は視点が変わって、まだ元気だったころのナスミとちょっとずつ関わりを持った人たちを通して見えてくる、ナスミの人生。そしてナスミによって変わったり救われたりした、その人たちそれぞれの人生。
独立した短編で繋がっていく形式の小説です。

木皿泉さんはドラマ『すいか』で向田邦子賞を受賞されたそうなんですが、そういえば木皿作品には、昭和の匂いのする家がよく似合う。
人間の持つどうしようもない弱さだったり情けない部分を愛おしむようなところとか、人生を進むうえでは、悲しさとかさみしさとかも全部抱えていくしかないじゃない、って、強がるでもなくしっかりと腹に収めているような感じとかも、向田作品に通じるものがあるのかもしれません。なんつって、向田作品はエッセイ含め数冊しか読んだことないんですが。

小泉今日子さんは、その『すいか』にも、3億円横領して逃亡中の、主人公(小林聡美さん)の元同僚、という役どころで登場しています。
日常の少し外側にいて、日常の中で閉塞感や挫折感を味わっている人たちが、何かの折に少しずつ思い出す。この世にいなくなってからも(いや『すいか』では生きてるけども)登場人物の胸の中にものすごく大きな存在として残っていて、時々その思い出が背中を押してくれる、という独特な存在の役を、木皿さんはいつも小泉さんに託しているなあと思います(多分脚本の時点で当て書きしているはず)。しかしこれがまたピッタリはまるんだぁ。
明るいけどその裏にちょっと寂しさがにじむところとか、ちょっとはすっぱな雰囲気とか、人を赦すやさしさのある感じとか、潔さとか。
まあ結局演技が上手いからなんだろうけど、観ている方が何か、この人の存在そのものって感じてしまうくらいのはまり方をしているなあと、木皿泉作品で小泉今日子さんを見るたびに思います。

そんなわけでこの本を読むときも、ドラマのキャストを脳内に降臨させつつ読み進めました(小説が初出の人については適当にキャスティングした)。
ちなみにテレビドラマでのキャストはナスミの小泉今日子さんの他、長女の鷹子を薬師丸ひろ子さん、三女の月美がミムラさん、ナスミの夫は吉岡秀隆さん、笑子バアサンはなんと片桐はいりさんでした。寺内貫太郎一家の樹木希林さん的で、こんなところにも昭和のファミリードラマへのオマージュを感じさせますね。

そんなにボリュームはないので2時間くらいで読めますが、なんだかじわじわ来てティッシュ12枚くらい使いますのでご準備ください。

例えば何のとりえもなくて才能もなくても、人はその存在だけで、人とのかかわりの中で知らず知らず光を放つのだと。人と出会って、別れて、またその出会いと別れが次につながっていって、そういうリレーみたいな、連鎖するものが人生で、だからどんな人も「いてよし」「生きててよし」。
そんな深くて強い、温かな肯定を感じる、木皿泉らしい作品でした。と、まとめてみる(笑)

いい本でした。おすすめです。

by vitablommor | 2019-05-31 09:36 | 本・CD・DVD | Comments(0)

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